海外の健康保険と日本の健康保険

さて、うちの歯医者さんは海外からの患者様が多いので、海外の健康保険制度と日本の保険制度の比較をしてみましょう。

来院される患者様の国籍のランキングは、中国、韓国、アメリカ、フランス、イタリア、ロシアの出身の方が多いですね。
スペイン語圏の方は少ないような気がします。


ハートと電卓


【健康保険について】

どの国においても、医療を適切に提供することが国の最重要課題の一つという考えは共通になっています。

日本では「病気での困っている人を助けよう」というイメージが強いですが、各国の歴史や国民性、経済情勢等、様々な要素が絡まっているため、医療の提供のあり方にはそれぞれの国の独自性が強く表れるともいえます。



【日本の健康保険】

日本の健康保険は、利用者である国民がいずれかの公的医療保険に加入し、利用者とその勤務先企業等が保険料を支払い、支払われた保険料を主な財源とし、利用者が病気やケガ等に見舞われた際に、医療機関の医療サービスという保険給付を受けられるという「社会保険方式」です。

日本の健康保険の利点をあげると、「国民保険制度(全国民が公的な医療保険の保険を受けることができる制度)」や「フリーアクセス(保険証一枚あれば、好きな時間にどの医療機関ででも公的保険を使った医療を受けられる制度)」があるところだと思います。

 医療サービスを受けた利用者には一定の自己負担(約三割)が発生します。
ただし、年齢や所得に応じては、医療機関や薬局での支払いが一か月のうちに一定額を超えた場合には、それ以上は自己負担をしなくても良いとする「高額医療費制度」があります。

これは、医療費を原因として国民が経済的に困窮することを避けるためです。
「高額医療費制度」も、他国には同等・類似している制度はあまり存在しないので、日本の独自の医療制度として海外からも注目されているそうです。

ドイツとフランスは日本と同じく「社会保険方式」による医療制度が構築されている国です。
イギリスは、税を主な財源ととして医療制度が運営される「税方式」の国です。

「税方式」の国では利用者はほぼ無料で医療サービスを受けることができます。
しかし、医療へのフリーアクセスには制限があります。アメリカは、国民全般を対象とする公的医療保障制度を持たず、公的医療保険制度の関与をできる限り小さくしようとする「公的医療限定方式」とでも呼べそうな、少し変わった体制を持っています。

この「公的医療限定方式」の国は、世界でもかなり少ないそうです。

イギリスの町並み

【イギリスの「公的医療限定方式」についてもっと詳しく】 

イギリスでは、「税方式」により運営される国営の国民保険サービス医療が提供されます。対象利用者は、イギリス国内に住所を持つ人です。

利用者は基本的に、窓口での自己負担や保険料の負担なしに、医療サービスを受けることができますが、薬においては自己負担があります。

医療はフリーアクセスではなく、かかりつけ医制度が厳密に運営されています。数年前の日本にも、かかりつけ医制度はありました。
利用者はあらかじめかかりつけ医の診療を受け、必要に応じかかりつけ医の紹介を受けて専門医を二次受診する仕組みで、家庭医の二次診療を受け付けてもらえます。

窓口での自己負担がないのはいいですが、診てもらいたい時にすぐ診察を受けることができないのが大きな欠点に感じられます。



【日本と似た欧州の国】

ドイツは世界でも最も早く公的な医療保険制度を導入した国です。
もともとは低所得層や特定の従業員を対象に発足した公的医療保険ですが、現在では国民の約九割が加入しているそうです。

年間所得が限度額以下の被用者や学生、年金受給者、失業者は公的な医療保険に加入する義務があります。
日本の健康保険も義務なのですが、公務員、自営業者、報酬の高い被用者等は加入義務を免除されていて、公的医療保険に加入する場合には任意加入者として加入します。

さて、この時点で財源はどうしているのでしょうか。
2009年以降は民間医療保険の加入義務が課されるようになり、官民の医療保険を合わせて、事実上の国民保険が達成されることになりました。

近年は利用者がどの疾病金庫の医療保険に加入するかを選択できるようにし、公的医療保険実施者間の競争を促しています。
税による補填は原則行われていません。

利用者には、最初にかかりつけ医を受診することを義務付けているわけではありませんが、かかりつけ医の招待状を持たずに専門医を受診した場合は10ユーロを自己負担する必要があるそうです。

それもあり、利用者の約九割がかかりつけ医をもつようになっており、事実上のかかりつけ医制度が機能できています。
入院、薬剤等については利用者に自己負担がかかりますが、一般患者は年間の2パーセントまで、一定の自己負担限度額が設けられています。

フランスの場合を見てみましょう。
社会保険方式で、地域ごとに設けられた被用者対象の公的医療保険、自営業者等の非被用者を対象とする公的医療保険等が保証を提供しています。

公的保険によるのは99パーセントで、ほぼ国民保険と同じ状態です。医療保険の財源は労使拠出の保険料が中心ですが、「一般社会税」という名の目的税(税金)も投入されています。

外来三割、入院二割等、一定の自己負担はあります。外来受診の際には、窓口で一度医療費全額を支払わなければなりません。
後日、自己負担分を除いた金額が償還されます。

入院等の場合には、自己負担分だけを支払う、日本と同様の形で支払います。
この公的医療保険では、補填されない自己負担分を補填する商品を、共済組合等の民間保険会社が提供していて、民間の補足的医療保険に加入することが通例になっています。

このような民間医療保険は、保険料が収入に応じて設定される低所得者については、税財源により無拠出で加入できる仕組みがあるなど、民間保険でありながら公的な側面も有しているようです。

アメリカの国旗

【アメリカでは】

アメリカでは、公的な医療保障制度は、65歳以上の高齢者及び障碍者を対象に連邦政府が提供している「メディア」と、低所得層を対象に州政府が提供している「メディケイド」の二つがあるだけです。
つまり、お年寄りにはほとんど同じ制度が有るわけです。

若者には、民間保険会社の医療保険に加入することしか、医療保障をてに入れる方法はないということです。
その背景には、公的な関与を嫌い、自由競争と自己責任に基づく民間の力を尊重するというアメリカならではの考え方が関与していると考えられます。

競争を勝ち抜いて、質の高いサービスを提供する者が破壊報酬を得ることができることなど、アメリカらしい実力主義な利用者も、国の保護をあてにするのではなく、自分で保険を準備させる、こうした風土でアメリカは世界最高水準の医学と医療現場を実現し、つくってきたのです。

しかし、欠点においてアメリカの医療は、世界でも群を抜いて高くついてしまうことになってしまいました。
もともとアメリカでは、企業が福利厚生の一種として、従業員に民間保険会社の団体医療保障を企業に頼ってしまうことをよく思っていなかったことも背景にあるようです。

しかし、経営環境が厳しくなって、コストのかかる従業員への医療保障提供を行わない企業がふえてしまいました。
企業が準備してくれないのであれば、各個人が自分で民間の保険会社に加入せざるを負えませんでした。

しかし、民間医療保険への加入は義務ではなかったので、アメリカはこのような形で、なんの医療保険にも加入していない無保険者が増えてしまい、政治問題にまでなってしまいました。
このような出来事を踏まえ、現在では民間との契約なので縛りも多くなり、厳密になっているのではないでしょうか。

最近は補助を受けて民間保険に加入するよりも、加入しないで保険料を払わないほうが得策という考えもあり、無保険者のままで居続ける人もいます。
一方で、不健康な状態の無保険者が契約に加入したことにより、保険会社の収支が悪化してしまいました。

これらの問題はまだまだ山積みのようです。
簡単に言うと、日本などの国では保険制度がポピュラーで、アメリカは民間で保険経度がポピュラーです。

簡単に言えるものではありませんが、日本の医療制度には利用者である国民の目線に立てば、国民保険、フリーアクセス、高額医療費制度など、すばらしい仕組みが備わっているので、現状、日本人はたいへん恵まれているといえるのではないでしょうか。
時代の変化とともに保険も変化しているので、これからも新たな制度の誕生に期待していきたいですね。

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